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ちいさこべ (新潮文庫)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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| 人気ランキング: | 103292 位
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| 参考価格: | ¥ 660 (消費税込)
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全てが素晴らしい、中編4作収録
花筵、ちくしょう谷、ヘチマの木、そして表題作と、全てが読み応えのある中編集だ。この4作の中では表題作「ちいさこべ」が最も有名かもしれない。底抜けに明るく爽快なこの小説は、終戦後の執筆当時どうしても必要だったのだろうが、やや類型的で「そんなかっこいい奴ぁおらんだろう!」という気がしなくもない。本宮ひろしの劇画やテレビなんかだと江口洋介主演一つ屋根の下みたいな話である。とはいえ読後感は爽快だ。一方、苦渋と矛盾に満ちた「ちくしょう谷」はかなりの問題作。宗教的なまでに全てを赦す主人公もやはり「そんなやつぁおらん!」という気がするのだが、読後感に残るやりきれなさを主人公自身の独白に顕す事で深みがぐーんと増している。「赦す」ということがテーマというが、むしろ裏!切り不実猜疑差別文明非文明贖罪などあらゆる納得いかない不条理なものを煮詰めこんだような、周五郎作品にしてはつらい幕切れだった。失敗するしないではなく、成そうとする事に意義があるという結末は重い。「ヘチマの木」は出版・広告制作関係の夢のある若者必読の青春記。主人公は江戸の椎名誠みたいなもの。旗本の家を逃げ出して未来の見えない弱小瓦版の見習い記事屋に潜り込み、いじけ悩み酔いかます姿はこの業界の一つの実体だ。おそらく、作者自身の記者時代が投影されているのだろう。この作品も周五郎らしくなく、挫折によって終わる。若い頃であればこのヘチマの木にやられたかもしれないが、現在のワタクシに最もグサっときたのは「花筵」だ。唯一の女性主人公武家もののこの作品は表面的には良??賢嫁的なストーリーだが、夫・真蔵の「夫婦といえども一心同体にはなり得ない、それぞれがそれぞれにに社会に責任を果たしていく義務がある」という言葉に命がけで志を継いでいく事によって一つの反証を示しているように思える。家と安穏な暮らしを失い、ついには産んだばかりの娘まで失いながら、独りで生きていく努力と工夫を怠らないお市。しかし、それはただ強い、からではなく、やがて夫の残した無念をはらす唯一のチャンスに向けて全てをほおり出す、そこには自分やお家のためというような打算は無く、夫の無念を晴らすという一点しかないのである。そうする事によって夫婦が一心同体になりうるという事を作者は描きたかったのではないか。よくできたハッピーエンドは付け足しのようなものだ。最後に主公を襲う大水害は柳橋物語のを思い起こさせ、改めて大災害を描かせたら一番の週五郎評を痛感した。
新潮社
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